素材と施工方法の組み合わせが重要なポイント!フロアタイルの種類と
失敗しない選び方
RESTAでは日本国内の主要メーカーのフロアタイルほぼ全てを取り扱っており、自社オリジナル商品もこれまで多くの販売実績があります。現場からの声やメーカーとの開発過程で出てきた課題と実際の試験データなどの情報を元に、お客様にとって最も満足いただける製品選びのポイントを紹介します。
一般的にフロアタイルとは?
フロアタイルとは主に店舗などで使用されていることが多い床材で、一般的なものは塩化ビニールを主な原料としており、耐摩耗性が高く土足でも使用できる床材です。接着剤での固定が必須で、プロの施工業者による施工が一般的です。クッションフロアに比べて見栄えが実際の木材フローリングに近いというメリットがある反面、製品そのものには耐水性がありますが、目地があるため防水性能としては劣ります。現在では店舗だけではなく一般住宅でも施工されることが多くなっています。そのため、より住宅の施工に適した製品や、プロではない方でも施工ができるようにした製品も開発されています。
フロアタイルの施工方法と製品選びの
重要なポイントは以下の2点になります。
●基本的には接着剤による
固定が必要であること。
●粘着剤、両面テープ、置くだけなどの方法で
施工する場合、
その施工でも耐えられる
特性がフロアタイルにあること。
夏場の暑い環境であれば、フロアタイルが膨張してサイズが大きくなり突き上がります。
冬場の寒い環境であれば、フロアタイルのサイズが収縮して小さくなり隙間が空きます。
施工方法に合ったフロアタイルを素材で選ぶことで以下の減少を抑えることができます。
フロアタイルの基本的な構造
最もシンプルな構造で、価格が安いという点が最も大きなメリットです。一般的なフロアタイルは上記のように大きく4層に分かれています。
艶感を調整したり、抗菌などの表面機能を添加できます。UVで硬化させるウレタン塗膜がよく使用されています。とても薄い層です。
塩化ビニル樹脂などで出来た透明の層。厚いほど耐摩耗性が良く、印刷層のダメージを防ぎます。製品によって薄いものは0.07mm、厚いものであれば0.50mmなどがあります。
石目や木目などが印刷された層で、PVCや紙でできています。
一般的に塩化ビニルまたは塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体を主体としてできており、最も分厚い層です。ジオクチルフタレートなどの可塑剤(柔軟性を上げる添加物)や、カルシウムなどの添加物を加えることで、フロアタイルの特性が決まります。
フロアタイルの施工方法は2種類
1.接着施工タイプ
一般的なフロアタイルはこの接着型です。両面テープや粘着剤を用いた施工は推奨されません。このタイプのフロアタイルは、温度変化による寸法変化がとても大きいため、接着剤による完全な固定が必須です。そのため原状回復は不可です。フロアタイルとしては単純な構造であるため、最も安い価格帯の製品となります。
2.置き敷き施工タイプ
接着材を使わず施工するフロアタイルです。ピールアップ施工などの粘着材を使用するタイプもこちらのタイプに含まれます。製品性能としては、温度変化による伸縮率を抑えること、製品自体が反ったり湾曲しないこと、完全に置くだけのタイプであれば、その製品の裏面に滑り止め機能が必要です。また、クリック式のフローリングも接着剤を使用せず施工できるため、この分類になります。
粘着剤付きのフロアタイルについて
-
最も施工が簡単な粘着剤付フロアタイルは、製品性能としては1の「接着タイプ」のものが多いのですが、粘着剤で固定するため、施工方法としては「置き敷きタイプ」となります。つまり、粘着剤での固定では不十分であるため、長期的には安定せず、冬場にすき間が生じたり、夏に突き上げたりする現象が発生します。このタイプの製品に関しては、文化祭などの一時的な使用(原状回復は不可のため、ベニヤ板などに貼る必要があります)や、仕上がりを気にしない本当に最も簡易に施工したい場合のみの使用を推奨します。
置き敷き施工タイプ
3種類の特徴まとめ
※1:ピールアップ施工とは、タイルカーペットなどで使用される施工方法で、粘着性が継続するピールアップボンドが下地に塗布されている状態です。
※2:ピールアップボンドを新規で塗布する場合は、不可。
※3:ピールアップと粘着剤の相性によって、貼付け強度が異なります。
※4:ここでの防水性能とは、表面にこぼれた水分の下地への水の回りにくさです。
注:上記の表は一般的な製品の特長であり、個々の製品によっては当てはまらない場合があります。
なぜ普通のフロアタイルは
接着剤が必要なのか
フロアタイルは樹脂でできており、建物の構造や下地である木材や鉄骨よりも
サイズの変化がとても大きい特徴を持ちます。
そのサイズ変化を抑え込むために接着剤での固定が必要です。
ここから少し、内容が難しくなりますが、サイズ変化が起こる要因と、
その変化を抑えた置き敷きタイプの製品特長を紹介していきます。
1.樹脂の成型後の収縮
樹脂全般に共通する、樹脂の成型後の収縮が発生します。樹脂は温度や圧力で配列された強化繊維の配列が乱れます。乱れる事で寸法が変化(収縮=縮み方向)してしまう欠点があります。また、素材を柔らかくするために「可塑剤」という材料がPVCに添加されており、その分量が大きいほど、収縮率は一般的に大きくなります。つまり、柔らかいフロアタイルほど、製造後の収縮は大きくなります。
これは、製造工場である程度抑えることが出来ます。一般的なフロアタイルはその製造過程において、塩ビベースに木目などのフィルム、耐摩耗層がプレスされ、約1.5mほどの大きな板を製造し、この状態で工場で一時保管されます。この一時保管の間に十分な収縮をさせ、その後にフロアタイルのサイズにカットして製品梱包することで、この製品としての収縮率は施工に影響がないほど抑えることが出来ます。
例えば、海外製で異常に安いフロアタイルの場合、製造効率を上げて価格を下げるため、この安定性のための一時保管をせず、カットしした寸法安定性が悪い製品もあります。
この製品規格は、JIS A5705にて以下のように試験と合格基準が決められています。
80℃で6時間熱し、常温に戻したときの変化率が、0.25%以内(置き敷フロアタイルの場合0.15%)
※RESTAオリジナル品eucaは全てのシリーズにおいて、この基準値をクリアしています。
2.温度変化による伸縮
どのような物質も、温度変化によって、そのサイズが変わります。ただし、その物質によって、その変化率は大きく異なり、例えば、1mのものに10℃の温度変化を与えた場合、変化の大きなポリエチレンだと、1.8mmも伸びます。また、フロアタイルの一般的な材料である、軟質塩ビは0.8mm伸びます。(添加剤の割合などで変わります。)
この温度変化による伸縮率について、置き敷形のフロアタイルではJIS規格において以下のように決められています。線膨張率が6.0×10^-5以下であること。これは、1mのものに10℃の温度変化を与えた場合、0.6mmの伸びを許容するものです。普通の塩ビ製フロアタイルであればこの基準値外の0.8mmとなるため不合格となります。
代表的なフロアタイルの線熱膨張率
上図は、RESTAにて実際のフロアタイルを使用し、実際に測定したデータです。上図のように製品によって膨張率は大きく異なり、接着タイプは大きく、置き敷タイプは小さい値となっています。これは、メーカーカタログにも一般的にはあまり公開されていないデータで、JIS規格に合格していれば、あまり気にする必要のないデータです。ただ、製品の施工方法を正しく考える上ではとても重要なデータです。例えば、粘着剤付塩ビタイルの場合、置き敷タイプのJIS規格基準を超えていますが、接着タイプではないなど、やはり、一時的な使用にとどめるべきであるということがわかります。
※試験はJIS規格で定められた方法とは異なり、簡易的な方法で測定していますが、理論的には結果に大きな差はありません。
線膨張係数6.0×10^-5以下
という基準について
JISによる合格基準である線膨張係数6.0×10^-5は「置き敷フロアタイル」としても実用的な数値ではないとRESTAは考えています。
例えば室温23℃で施工した場合、真夏の窓際で、エアコンが効いていない場合、そのタイルの温度は60℃くらいまで上昇します。この場合、1000mmの床材は約3mmの膨張をします。この膨張に耐えきれず、床材は突き上げの現象を発生させます。また逆に冬場の場合、5℃までフロアタイルの温度が下がった場合、1000mmに対し約1.5mmの収縮を起こし、すき間が発生します。理論的に、建物と同じ伸縮率を持つフロアタイルが熱膨張による伸縮の面において理想的と言えます。ただ、樹脂の線膨張率は建物の構造に使用される鉄、コンクリート、木材と比較して約10倍の差があります。また、実際に突き上げるかどうかは、その素材自体の膨張力にも左右されます。膨張力が突き上げるために必要な力よりも大きくなったときに、実際の突き上げ現象が発生します。
RESTAとしては、用途や、下地の材料にもよりますがJIS規格の半分である3.0×10^-5以下とすることが突き上げやすき間が生じにくくなる実用的で実現可能な基準だと考えます。
フロアタイルの伸縮を抑える
構造や素材の代表例
ガラスファイバー層の追加
フロアタイルの中心にガラスファイバーを追加する方法があります。これは、一般的な置き敷フロアタイルで使用されている製法で、特に高温時の伸長を抑える効果があります。また、ベース層に厚みを持たせ、その自重を重くすることで、突き上げや反りを抑えます。
炭酸カルシウムの添加
炭酸カルシウムと塩化ビニールの割合を約6:4とすることで出来る素材を一般的にSPCと呼びます。この素材にすることにより、膨張率を半分以下にすることが出来ます。また、塩ビよりも炭酸カルシウムの方が原材料としては安く、材料コストを抑えるメリットがあります。ただし、塩ビメインのフロアタイルが、ホットプレスという製造方法であったのに対し、全く別の製法である押し出し成型にて、大判を作成する必要があるため、製造コストは上がります。
炭酸カルシウムの添加によって、製品安定のための大きなメリットを得ることが出来ますが、下記のでメリットがあります。
・塩ビに対して硬く柔軟性がないため、カットが少し硬くなる。特に切り欠きが難しくなる。
⇒下地の凹凸が目立たなくなるというメリットもありますが、その凹凸を吸収するため裏面にパッド層があるもの選ぶか、別途不陸調整用のアンダーレイシートを敷く方がよい。
・炭酸カルシウムの比熱が大きいため(温まりにくく冷めにくい)PVCメインの製品と比較すると少し冷たく感じる。床暖房をつけた時、温まるまでに時間がかかります。
※S.P.Cは東洋テックスの登録商標です。
SPC素材の改善
SPCのベースコアで作るデメリットを解決するため、SPC層を真ん中に配置し、塩化ビニル層で上下を挟み込む構造をABAもしくはハイブリッドSPCと呼びます。膨張率は、SPC層の特性を持ち、SPCのデメリットである冷たく感じる点を改善した構造です。まだ新しい技術であり、安定した品質で製造できる工場が少なく、実用化に向けた製品開発が各工場で進んでいます。
オレフィン系床材
オレフィン系床材は、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などを原料とした床材の総称になります。日本ではまだ採用されている製品は少ないですが、欧米では主流となりつつあります。その理由として「環境負荷の低さ」にあり、PVCは焼却時に有害物質が発生しやすいのに対し、オレフィン素材はリサイクルが容易であるという利点があります。日本での採用が進まない主な理由は、ごみ焼却炉の性能が高く有害物質の発生が抑えられることもありますが、製造コストが高く、これがメーカーにとって採用を難しくする要因ともなっています。柔軟性はPVCに劣りますが、寸法安定性、耐久性、耐薬品性に優れています。SPCと比較すると熱容量が大きく、冷たさを感じにくい利点があります。オレフィン自体は水に浮くほど軽量で、施工の容易性も高めます。軽量であることは、輸送時にも燃料消費が少なくなり、環境に対する負荷が軽減される利点があります。
エコである製品は、製品そのものの性能を犠牲にしているわけではありません。床材としての性能だけを比較しても、PVCよりも優れた素材です。
層毎の特性の違いなどによる
フロアタイルの
反り上がりについて
フロアタイルの各層が「樹脂の成型後の収縮」により、反りなどの変形を起こす場合があります。置き敷タイプではJIS規格によって、0.5mm以下の反り上がりまでであることが決められています。
また、この試験に合格しているフロアタイルでも、冬場の施工時など、暖房をつけた状態で施工し、接着剤が乾燥する前に表面から急激に冷えることで、表面層が縮み、反った状態で接着剤が乾くことがあります。この施工上の注意は日本メーカーの製品でも一般的に記載されています。
急激な表面からの温度低下は、フロアタイルの反り上がりを発生させます。これを置き敷タイプで防ぐ方法として、主に2種の方法があり、自重があって反りよりも重力が強いこと、またはクリックなどの連結があることです。
まとめ
接着型のフロアタイルは、接着して固定できるので製品自体の伸縮や反りは重要ではありません。
この接着剤の固定をしない場合、フロアタイルの製品自体に安定性が求められます。
その安定性のポイントは、
・温度変化による製品の伸縮率が小さい必要がある。
・表面からの温度変化によって反らない構造である。
この2点がしっかりあることが、置き敷フロアタイルの製品選びで最も重要です。
引用元:
日本工業規格JIS A5705-2022 ビニル系床材
日本工業規格JIS A1454-2022 高分子系張り床材試験方法
注:このページの内容は、RESTAスタッフの知見及び簡易試験のデータに基づく意見であり、随時、よりよい情報に更新させていただきます。
フロアタイル・Pタイル教室
-
豆知識
-
購入前の準備
-
施工方法
-
eucaシリーズの施工方法
-
eucaシリーズの施工動画