DIYペイントと機能性塗料防錆塗料とは
防錆塗料とは、金属に発生するサビの発生や進行を抑制してくれる塗料のことです。素地を保護するほかにも、すでにサビてしまった箇所を補修できる便利な塗料です。今回は、錆止めを使ってみたい入門者に向けて、防錆塗料の基本的な事柄についてご紹介します。
サビとは、酸化還元反応により金属表面が電子を失ってイオン化し、酸素や水と化合して生成された腐食物のことです。
もう少し詳しく説明すると、金属原子は、プラスの電気をもつ原子核とマイナス電気をもつ電子によって構成され、普段はプラスとマイナスの電気量が互いに打ち消しあい、電気をおびていない中性の状態を保っています。
ところが、空気中に放置したり雨ざらしにしておくと、安定していた状態が崩れて金属表面から電子が失われ、イオンが酸化物や含水酸化物へと変化し、腐食物として堆積していくのです。
金属のサビやすさは、原子から電子がとりさられる性質、つまり、イオン化傾向の大小によって決まります。
身近な金属をイオン化しやすい順に並べてみると、アルミニウム>亜鉛>鉄>ニッケル>鉛>銅>銀>白金>金の順になります。
ここで注目したいのが、サビにくいとされているアルミニウムが上位にある点です。アルミニウムは、空気中ですぐに酸化して表面に極薄い白色のサビを作り出します。このサビは「酸化アルミニウム」と呼ばれ、内部を保護する役割があります。
サビの進行を防ぐには?
アルミ製の鍋や食器、アルミサッシなどは、サビていないと思っているだけで、実は、人工的に酸化アルミニウムの膜を付けて、内部にサビが進行しにくい状態に加工されている製品です。
酸化アルミニウムと同様に、内部を保護する働きを持つサビは、他の金属にも見られます。
例えば、サビを防止するため、鉄瓶やナイフ、フライパンなどに施される黒錆は、鉄を強く熱して酸化させたものです。また、銅を腐食させた「酸化第一銅」や「酸化第二銅」、「緑青(ろくしょう)」なども、サビの進行を防ぐ働きをがあります。
防錆塗料の効果や種類
次に、防錆塗料を使うと何故サビないのか?という点についてですが、防錆塗料には、イオン化傾向の早い防錆顔料が配合されており、これが素地の身代わりとなってサビることで、素地の腐食を防いでいます。
そのため、鉄の防錆に関しては、鉄よりもイオン化傾向が早い、鉛系やクロム系の顔料を含んだ塗料が適しています。
しかし、近年では、健康や環境への配慮から、鉛系やクロム系の顔料を使用した商品が減少傾向にあります。
サビの上から塗れるタイプの商品
金属の腐食を止める効果がある酸性塗膜が、サビと強固に密着し腐食の進行を抑制しています。
さらに、防水性や撥水性、耐久性に優れた強固な塗膜が、腐食の原因となる水と酸素を遮断してくれています。
こちらのタイプも、以前までは鉛丹などの鉛系顔料が主流でしたが、上記と同様の理由から、現在では、ベンガラ顔料を用いた商品が多くなっています。
錆転換剤
すでに発生したサビを変換剤の働きにより、安定した黒錆やリン酸第二鉄などの酸化鉄に転換させて、サビの進行を抑制するものです。
リン酸系の顔料は、皮膜が水に溶けにくいため、空気や湿気にさらされても、サビが発生しずらいという特徴を有しています。
サビの除去能力も高いので、金属塗装の下塗りに用いられる、エッチングプライマーに含まれることが多い顔料です。
現在、高品質な防錆塗料が数多く販売されていますが、その性能を存分に活かすためには、塗装前のケレンと清掃が大切になります。
ケレンとは、塗装面の汚れやサビ、旧塗膜などを落とし、素地をならして塗料との密着をよくする作業のことです。
通常、ワイヤーブラシやサンドペーパーなどを使い、素地の表面が露出するまで研磨しますが、プロの業者になると、空気圧や水圧で研掃材を吹き付ける、ブラスト機器が用いられています。
ケレンに加えて、下地素材や素地の状態、環境に合わせて防錆塗料を選択することも重要です。
近年、主流となっているエポキシ樹脂系の塗料は、金属への密着性に優れているほか、防錆性や耐摩耗性も高いことが特徴です。しかし、紫外線に弱いため日当たりの良い屋外での使用には向いていません。
また、リン酸被膜の上にポリエステルパテは使えないので、必ずウレタン系プラサフなどの塗装を選ぶようにしてください。
防錆塗料を塗り替える時期については、合成樹脂調合ペイントを鉄部に塗った場合は3~5年、ウレタン系塗料だと5~8年程度が目安となります。
塗装面に粉が吹くチョーキング現象(白亜化現象)をおこすと、防水性が悪くなり雨が降った際に水分を吸水してしまいます。錆びの進行を助長する恐れがあるので、上記の症状が現れたら早めに塗り替えを行いましょう。
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