DIYペイントの豆知識塗装の色あせの原因
ペンキは、塗った後に時間が経過してゆくことで、少しずつ色があせていきます。しかしなぜ、色があせてしまうのでしょうか?止めることもできるのでしょうか?色あせの原因は色と紫外線が大きくかかわっています。
人間の肌は、紫外線を浴びることでビタミンDをつくります。
また、ビタミンDは体に必要なビタミンです。紫外線を浴びることは、人間にとって悪いことばかりではありません。
しかし、日焼けをしすぎるとしみそばかす、皮膚がんの原因になるなど、紫外線は肌に悪影響も与えます。
紫外線を浴びすぎると、ダメージを与えられるのは、人間の肌だけではありません。塗料や物質にも、悪影響を与えます。
紫外線とペンキ
ペンキの色あせは、紫外線を浴び続けることが原因で起きるのです。化学的な表現を使うと、色素の化学結合が変化し、物質構造が異なるとペンキも色あせていきます。
紫外線はペンキの色に影響を与え、変化させてしまうのです。
ペンキが色あせてしまうと色が薄くなり、古ぼけた印象を与えます。また、色あせて劣化すると、ペンキが持っていた防汚や防水の効果もなくなってしまいます。
ペンキの色あせを防ぐ方法はあるのでしょうか?
道路標識や、観光地のレストランの看板、昔からあるお店の外壁、昔からあるレジャー施設などで、ペンキの色あせを見かけることができます。
文字がかすれて見えなくなっているもの。昔からあるお店や建物の外壁や看板の色が薄くなっている様子。色があせて、場所によってはペンキが浮いて割れているもの。
このように、道路標識や看板のペンキが色あせると、色が変わって標識の意味がわからなくなったり、運転初心者は混乱してしまったりするかもしれません。
また、建物の外壁のペンキが色あせると、頼りない印象を与えます。
公園のベンチや建造物のペンキが色あせると、座ったら洋服が汚れたり、剥げたペンキが肌についたりするのではないかと、不安な印象を受けますね。
太陽の光がある限り、ペンキの色あせは必ず起きます。
ペンキの色あせを防ぐ方法はあるの?
紫外線に当てない、水濡れをさせない、衝撃などの過度な力をかけない、低温や高温などの過度な環境変化を与えなければ、塗装後の色あせを防ぐことができます。
しかし、色あせを100%防ぐことはできません。
ペンキはどうしても、経年劣化で色あせてしまいます。
市販の保護材を使用すると、色あせを遅くすることができます。紫外線による退色や劣化を防ぎます。また、表面を保護し亀裂を防止、汚れをつきにくくしてツヤを出すことができます。
ペンキの色あせは、どの色でも同じように起きるわけではありません。退色しやすい色と、しづらい色があるのです。科学的な話になりますが、その違いを説明します。
ほうれん草は、ほうれん草に当たった光のうち緑色以外の色を吸収して、緑色の光を反射しているので、緑色に見えます。
リンゴは、リンゴに当たった光のうち赤色以外の色を吸収して、赤色の光を反射しているので、赤色に見えるのです。
ほうれん草やリンゴに当たる光にも、色があります。色によって波長が異なります。緑や青の光は、波長が短く、赤い光は波長が長いです。
さらに、光の波長が短い緑や青の光はエネルギーが強く、光の波長が長い赤い光はエネルギーが弱いのです。
ペンキの色あせのスピード
ペンキにも、ほうれん草のように緑のペンキ、リンゴのように赤いペンキがあります。おもしろいことに、それぞれの色によって、色あせのスピードが異なります。
緑のペンキは、エネルギーが弱い赤の光を吸収して、エネルギーが強い緑や青の光を反射するので、緑に見えます。緑のペンキにかかる赤い光のエネルギーは弱いので、色あせのスピードは遅いです。
それに対して、赤いペンキは、エネルギーが強い緑や青の光を吸収し、エネルギーが弱い赤の光を反射するので、赤く見えます。赤いペンキにかかる緑や青の光のエネルギーは強いので、色あせのスピードが速いのです。
色によって色あせのスピードが異なるので、同じタイミングで文字を書いた看板でも、一部の文字だけ先に消えてしまったりするのです。
赤いペンキの色あせ、赤い塗装の色あせを防止するために、様々な場所で様々なことが行われています。何度でも塗りなおして維持されている例を紹介します。
極端な環境の変化は、ペンキを塗装した場所に負担がかかります。人間も、気温が上がって薄着で過ごしていたら、急に気温が下がってしまい体に不調をきたしたり、風邪をひいたりすることがありますね。
建物の外壁塗装の場合も同じです。
直射日光に当たり続けて気温が高く、乾燥していた日が続いたかと思えば、突然の雷雨にさらされて、水に濡れてしまう。気温が下がって雪が降り、べちゃべちゃと濡れてしまう。
こういった天候の変化に常にさらされ、建物の外壁は、ペンキの色も、壁面の素材も、弱ってしまいます。
もちろん、天気が極端に変わらなければ、ペンキの色あせも緩やかです。
しかし、春夏秋冬の四季の移ろいが美しい日本では、急な天候の変化は避けられないことでもあります。有名な観光地の例を2か所ご紹介します。
沖縄県の首里城
年間を通じて気温の変化は大きくないですが、夏の直射日光の紫外線は強く、台風の通過も多く、海からの潮風が強い地域です。
沖縄の有名な観光地である首里城は、日本で唯一の赤い(朱い)お城です。その赤い色はペンキではなく、天然の漆を使って塗装されています。
塗装の剥がれはいたるところに目立ち、都度塗りなおしていたそうですが、現在は平成28年から3か年計画が行われ、塗り直しの工事を行っています。
東京タワー
東京都港区芝公園に位置しており、大変有名な建造物です。東京タワーは黄赤色(インターナショナルオレンジ)と白の2色で塗り分けられています。
なんと5年に1回の頻度で、さびが発生する前に塗り替えられられています。一度に使う塗料の量は20kgの石油缶で約1,600缶の塗料が使用されています。
これだけの高頻度で、これだけの塗料を使って保守されているとわかると、いつ見ても美しい赤色が維持されていることに納得できますね。
ペンキの色あせは、起きてしまうもの。人間が年を取らずにはいられないように、ペンキの色あせも止めることができません。
しかし遅くしたり、起きてしまったら塗り替えたり、ペンキの色あせとうまく付き合っていきたいですね。
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